「紡さ、ん、あの何か食べられますか?」
「ん。自分でするから、君は俺の隣に座っていなさい」
名前を呼んだだけなのに、思わずかあああっと頬が赤く火照る。
何なんだろう。この人の、無駄に甘い視線が、金縛りにあってしまいそう。
新さんとは違う不思議な魅力で溢れている。
「よーし、仕切り直しでもう一回乾杯するわよ。皆、グラス持って」
事務で飲み会に参加してくれていたのは塚本さんを含めて12人。
殆どが女性の中、それに怯まず甘く微笑む紡さんは、ワインではなく芋ロックを片手に立ち上がった。
「素敵な歓迎会と、緩奈さんのこれからに期待しまして」
カンパーイ
一人ひとりとグラスを合わせて笑いあっていたら――やっと居心地の良い安心感が感じられた。
新さんとの夢の様な仕事の日々とは違って、塚本さんの豪快な指示の下で働くのはやっぱり楽しそう。
「そう言えば、新の姿を見ていなかった。仕事は順調みたいかな?」



