言葉を失った私に対して、社長はお腹を抱えて笑いだした。
「勿論、こちらからも君に条件をつけるよ。まあ、此処に就職する条件がどちらかと婚約するってことだったんだが」
知りません。そんなの知りませんってば。
これ以上混乱させないでほしいのに。
「条件は、好きになった方と婚約するってことと正社員になること」
「え」
「仕事でもパートナーとして支えられる女性がいい。そして、それが貴方はできる」
「私、そんな、本当に何も才能なんて無くて、事務でも言われたことをこなすことぐらいしかできていなくて」
「君の能力は二人がよく知っているみたいだから、その点は君じゃなくて二人を信頼しているよ」
何を言っても敵わないと思った。社長はずっしりと構えていて、懐が大きすぎて私が何を言っても、可愛いものだと笑ってる感じで。
呆然としていたら、ノックが響き社長はそのまま部屋から出て行った。
「さて、帰るか。兄貴、飲んでる?」
「ああ。ワインばかり飲まされた。日本酒が飲みたかったのに」
「そんなキザったらしい顔してるからだろ。じゃあ、俺が送っていくか」



