「おや、起きた。よっぽど救急車が嫌だったようだね」
クスクスと笑うのは、白髪の優しいおじさんだ。
「はい、眼鏡だよ。素敵な眼鏡だね。彼女もこの眼鏡を愛用していた」
そう言われて眼鏡をかけて状態を起こそうとして止められた。
「もう少し休んでいなさい。頭を打って脳震盪をおこしたみたいだ。連日の会場設営で疲れが溜まっていたようだね」
「あの、もしや貴方は……社長でしょうか」
私をねぎらう優しいその人は、先ほど塚本さんが案内していた社長だった。
「当たり。君は救いのヒーローだよ。毎年歓迎会での私の話が長いと新入社員から不評だったからね。シャンパングラスを持ったままずっと私の話を聞かなければならない。だが、今年は息子に頼んだ。君が心配だったから」
そう言われ、脳震盪だと言われたのも気にせずに起き上がる。
「申し訳ありません! 私の大人気ない感情で皆が作り上げた歓迎会をぶち壊してしまって! 取引先の方だったんじゃないでしょうか!? どうなりましたか!」
「ははは。君が真っ青になることではないよ」



