「は、離してください」
流石にそれは我慢できなくて、やんわりと遮ったら――思ったよりも腕を大きく動かしてしま、手に持っていたオレンジジュースがネクタイに飛び跳ねてしまった。
「ああ、すいません」
飛沫が、丸く染み込んでいくと、おじさんはフルフルと震えだす。
「このネクタイはイタリア製の高級品だぞ! 契約社員のお前の給料で弁償できるのか!」
今度は突き飛ばされて、そのまま隣のテーブルのテーブルクロスを掴んだけれど転んでしまった。
ガラガラ、ガシャンとテーブルクロスとともに食事が落ちてくる音がしながらも目がくらくらして起き上がれなかった。
せっかく皆で頑張ったのに。
私のせいで――。
じわりと涙が込み上げてきた瞬間、誰かにふわりと抱きあげられた。
「大丈夫?」
その優しい声に緊張が溶けたのか――私はそのまま気を失ってしまった。
助けてくれた人が誰かもわからないまま。



