「向こうで御曹司たちに黄色い声をあげている派手な子たちより――私は君みたいな真面目で清純な子のほうがタイプだな。君、所属は?」
「じ、事務の契約社員でして失礼します。、不破と申します」
「契約。はは、その歳で安定していないとは君も不安だろう」
馬鹿にするように笑われて、怒りよりも先に怖くなって後ろへ下がってしまう。
「うーん。素材は悪くない。家で働くなら、好きな部署に入れてあげるしもちろん正社員だよ」
正社員。
その言葉は、大学の卒業式までは確かに欲しかった言葉だけど。
この人の下では働きたいとは思わない。
「ん? 遠慮せずに私に可愛くおねだりしてみなさい」
「ひっ」
肩を引き寄せられて、背筋が凍りつく。
ねっとり絡みつく視線に、せっかく付けて頂いた宝石が汚れていきそう。
「私には、勿体なさ過ぎて―」
騒いで大事にはしたくないし、この人も取引先の大事な人かもしれないし。
何を言っても、何カ月も前から子の日の準備をしていた塚本さん達の仕事をぶち壊したくない。
「慎み深いところもさらに可愛いな」
引き寄せられた肩に乗った手が、すーっと背中を伝い腰に伸びた。



