「こんなに可愛いのに、魔法はまだかかっていないのですか?」
「魔法?」
髪の右上が少し重く感じて見上げると、小さくシャランと聞こえてきた。
「君のハンカチを浚っているので、お詫びに俺の一番大切なジュエリーと交換しておきますね。ちょっと失礼」
細長いベルベットの箱を開けて、小さな青い宝石で小鳥をモチーフにしているネックレスをいきなり私の首に翳してくれた。
「上着は脱いで、ブラウスの一番上のボタンを外すだけでも印象が違うよ」
「あの、これって」
「魔法使いにはなりたくないからドレスは君にあげられないけれど。お姫様になら俺はいくらでもしてあげられるよ」
不敵にそう笑うと、私の返事なんて聞こうとしないで会場へ戻ってしまった。
嵐――いや、一瞬だから竜巻?
竜巻の様に消えて行った副社長が、私の頭に何を乗せたのかが気になったのでトイレへ急ぐ。



