「塚本さん、交代します」
「あら、もう来たの? 誰?」

会場設備担当だった鈴木さんと言う塚本さんの同期の女性が交代に来たけれど、塚本さんはまだイケメンウォッチングしたかったみたいで物足りなさそうな顔をしている。

「塚本さんみたいに綺麗な人じゃないと、不機嫌になる人ばかりですよ」

そう言われ渋々仕事を交代している。
確かに塚本さんは、――さっきの受付の子たちと同じように綺麗だったけれど。



ざわざわと楽しそうな会話で溢れ返った会場と、オシャレな女の子ばかりで場違いな私は思わず下を向いてしまう。

契約社員とはいえ、やはり自分にはレベルが釣り合わない会社だった。

俯きながら、ずれた眼鏡を上げながら紙袋を渡し、名前に丸を付ける。

「俺だけど」
「はい、お名前を」
「だから、――俺」

入って一週間の私が声だけで分かるはずないと、思わず顔を見上げてしまった。

「やっと、顔を見たか」
「ひっ」

思わず喉から込み上げてしまったのは、御曹司弟が目の前に居たからだ。