危うく、ゴロゴロと猫の様に鳴きだしそうになってしまったじゃない。
「来週には、理恵子さんに婚約の挨拶に伺わなければいけませんね」
「うわはい」
「うわはい、って何語ですか」
「おばあちゃん、きっと喜びますよ。でも私がまだ夢から覚めていないといいますか」
「覚めなくていいんですよ。俺が夢みたいに甘い時間を貴方にあげますから」
クスクス笑いながら、セットが崩れた前髪で、ちょっと幼い雰囲気を残しながら笑う。
貴方と居ると、甘い空気で溶けてしまいそうになります。
でも、幸せだ。
「私にも飴、頂けますか?」
「もちろん」
袋から指先でつまんだオレンジ色の飴を取り出すと、私の口にぽにっと押しつける。
薄く口を開いて、飴が入って来ると、紡さんの顔が近づいてきた。
そのまま、柔らかい唇に触れながら、――私はゆっくり瞳を閉じた。