皆の前でプロポーズ。
それは、甘く皆に祝福して貰える素敵な選択なのに。
紡さんのあの笑顔の下の計算からでは、きっと皆の前では拒否できないと踏んだんだと思う。

悔しいけれど、言いたいことは一杯あるけれど、完敗だった。

私は震える右手を紡さんに差し出すと、ワンピースと同じローズピンクのルージュが光る唇で言った。



「宜しくお願いします」

と。

それから店内にジャズバンドが祝福の音楽や歌を披露してくれて、それと同時に天井に大きく投げ踊るようにピザを作ってくれたり。
新さんが甘い旋律でヴァイオリンを弾いてくれたりした。

「それと来年度から正式に正社員として迎え入れます。これは俺だけじゃなく新や塚本事務長からの推薦と君の実績ですからね」

契約社員だと腐っていた時期がある私からしてみれば、そんな次いでのように言われることではなくとても嬉しいことだったりする。

「ありがとうございます」

嬉しくて、指輪をなぞりながら微笑むと、紡さんは小さく淡く嘆息した。

「そんな顔するなんて、反則ですよ」