「こんなに早く出勤してきたと思ったら、もう返して欲しいってどういう意味?」
「どう言うってそのままの意味です」
「……新の方がやっぱり良かったか」
困ったなと苦笑する紡さんに、何だか苛ついてしまい、そのまま片足を紡さんの太股に乗り上げてしまった。
「紡さんが笑顔で隠して見せてくれない気持ちを見せて欲しくて」
「へえ」
「首を絞めてでも知りたいです」
両手をわなわなと動かすと、その両手首を掴まれた。
「俺の事、もっと知りたいですか?」
妖しく笑う。
その顔だ。
その顔がずっとずっと怖かったんだ。
「怖いって顔に書いてるのに、知りたいの?」
意地悪に言う。惑わすように笑う。
その笑顔の裏を見せようとして来ない癖に、――甘く私をみるその瞳はずるい。
「教えて下さい。私だけ貴方にぐちゃぐちゃで、酷いです」
私が震える声をそう吐きだすと、掴んでいた両手首から手が離されて、腰と頬に回された。
頬を伝う指先が優しくて、滲むように細くなった瞳は甘くて。
「そんな風に表情をコロコロ変えて一生懸命な貴方が好きです。緩奈」



