「紡さん、紡さん、起きて下さい」
ゆさゆさと肩を揺らしたら、いつもは後ろへ綺麗に流している前髪がはらりと乱れた。
お風呂上がりの時も思ったけれど、前髪を下ろすとちょっとだけ幼くて可愛いと思ってしまった。
長い睫毛も、綺麗な言葉を紡ぐその唇も、長い足も。
「何も教えてくれないなら返して下さい。私の気持ち」
そう私が言うと、椅子が小さく軋んで、一瞬で私の身体が傾いた。
それは、紡さんに腰を引き寄せられたのだと気づくのに数秒かかってしまった。
「起きてたんですか」
「君が出勤したと警備から連絡があったから」
じゃあ、ドアを開けていたのはわざとなんだ。



