「お、おはようございます」
「おはようございます。早いですね」
誰も居なかったら何処で時間を潰そうかと思っていたのに、こんな朝早くすでに入口の警備員さんが居ることに驚いた。
「あの、副社長は」
「はい。居ますよ。大丈夫ですか?」
松葉杖を持っている私に手を差しだそうとしたので、丁重にお断りしてから副社長室を目指した。
昨日は、無意識に気づいたら向かっていた場所へ自分の意思で向かった。
螺旋階段の前まだ辿り着いたら、足が震えてしまったけれど、それでも螺旋階段を上った。
一段一段、と登って行くと不用心にもドアが開いていて――窓が開いてブラインドが風で揺れている部屋の中で、腕を組んで下を向き座りながら眠っている紡さんを見つけた。
じわりと胸が熱くなるのは、紡さんと新さんの嘘。
きっと紡さんは私を送って帰った後にまた戻って仕事をしてたんだ。
新さんはそれを知っていて海外に行くとか嘘を付いたんだ。
この兄弟は――どうしてこんなに人を泣かせるのが上手いんだろう。
切なくなる。胸が痛くなる。
苦しいのに、笑顔が零れてしまう。



