「安心しろ。お前は凄く嘘つきだから」
「嘘つき……」
それは、私を見下すのでも蔑むのでもなく、よく分かってくれている言葉だった。
「理恵子さんのデザインの手伝いの件も、自分に自信を持てないのも、自分の気持ちに逃げているのも、お前が自分に嘘を身に纏わせているからだ」
流れていた涙が頬の上で乾きだして、ピリピリと現実を思い出されてしまう。
「正直に考えてみろ。お前は落としたけど、しっかり捕まえられてるよ」
乾いた涙の痕を、暖かい新さんの指が伝う。
強引なその仕草に、鼓動を抑えることはできなかったけれど、――違う。
私の胸には、まだ燻っている。
落として行った気持ちごと抱き締めてくれた紡さんの事が。
落として行った物を拾ってくれているのに私は、――私はソレからも逃げたんだ。
何を考えているのか分からない紡さんを思うと怖くてピリピリと胸が痛むから。
「兄貴さ、明日また海外へ飛ぶらしいから、もしかしたら今日の処理で徹夜で会社に居るか、朝一で仕事を片付けるかもしれない」
「……」
「数日時間が経って、風化しちゃう自信があるなら、俺にしとけ。約束な」
指先が離れて行く。
私はその熱が欲しくて縋ろうとしたけれど、逃げられた。
その場に崩れるように座りこんだ私を、愛しいモノを見るように笑った新さんはそのまま振り向くことなく、バイクに跨り帰って行ってしまった。
嘘つきな私に逃げ道を作ってくれたまま。



