「怖いは余計だ」
タオルを頭にグシャグシャに押し付けられて乱暴に返された。
きっと涙を隠してくれる為なんだと思う。
「で、兄貴は?」
「紡さんも怖いです」
「紡さんは、分からないからき、嫌いです。怖いと思ったら、本当は優しかったり、『忘れ物』とか変な事言って来たり、だ、抱きしめてくれたり」
煙草の苦い匂い、車を運転する長い指、何も見せてくれない、偽りの笑顔。
「紡さんがと、隣に居ると、私、く……苦しいんです。苦しくて、苦くて、胸がギュウッと締め付けられて、い……息が吸えないぐらい苦しくなるんです」
この気持ちの名前は……、あの螺旋階段に落としてしまった。
だから、私には分からないけれど、でも、苦しい。
車の中の沈黙も、何も見せてくれないのに私だけにあんなにぐちゃぐちゃにしてくるなんて、嫌い。嫌い。
「それって、怖いって言わないし、――嫌いでもねえよな」
溜息を吐いた新さんが、私の顎を強引に掴んで持ち上げた。
「兄貴がいつの間にか此処までお前を真剣に思っていたなんて、先を越されたな」
「そんな。そんな、こと」
「不破」
パニックになり、おろおろウロウロする私に、新さんは魔法の言葉をくれた。



