『今、話せるか』
「はい。話してますよ」
『引くなよ。家の前だ』
「!?」

急いでカーテンを開けると、大型のバイクが止まっていた。
バイクまで持っていたなんて知らなかった。
ヘルメットを指先で叩きながら、私気付いたのか見上げてきた新さんが小さく手を振った。

何も言わずに電話を切ると、此方へ向かってくる。
心の準備も出来ないままに、――来る。


「なんでタオルなんて被ってるんだ」
「け、化粧がボロボロで」
「普段もしっかりしてるわけじゃねーだろ」
セクハラだ。
乙女の部屋の玄関まで来た癖に、第一声がそれってセクハラなんだから。
「単刀直入で言うと、お前、俺と釜井を見てショックを受けてたのか」
「……単刀直入すぎです」
それを言う為にあんなに電話を鳴らし続けたのかな。
新さんが電話をしてきた理由が少し分からず戸惑う。



「社長が――まあ、俺の親父だが、受付の新人がお姫様気分で仕事してるから指導してくれって頼まれてな。今回だけだ。断ったけど――あいつらのお前への態度も気になってたしな」