しばしの沈黙のあと、紡さんはゆっくり言い出した。

「さっきの階段の所で落としたモノありますよね?」


「へ? へ?」

慌てて携帯やらカバンやら確認しますが、――何も無くなってなんていない。

何の事か、検討もつかず困っていると、溜め息を吐かれた。

「俺に会いに来てくれた気持ち、本当は何だか分かってるんじゃありませんか?」

「!?」


「あの場所に置き去りにしないで下さいね」


そう言って一言一言区切る様に言った。

「俺への気持ち、を」

「まっ 待って下さいっ」

「新への気持ちが芽生えだして、君は俺への気持ちを階段に落としていった」

「そんな、そんなの」

「さっきの登録してない番号見せて下さい」

まだまだ茫然とする私は言われた通りに見せた。


「やっぱりね。新ですよ。この番号」

「新、さん……」

「先に芽生えようとしていたのは俺への方。そう仕向けたのに」

そのまま、視線を反らしすぐに窓を閉め、アクセル全開で車は去って行く。