やや乱雑に電話を置くと、鞄やネクタイ、上着を手に持って私の元へ向き直る
「さて。また抱き抱えさせて頂きます。貴方に拒否権はありません」
そう言われてもどうしていいか分からず、視線をさ迷わすと、紡さんが笑う。
「今、あまり余裕がありませんので早くして下さい」
「!?」
諦めて、首に手を回したら、簡単に抱き抱えられてしまった。
細身なのに――そういえば風呂上がりの紡さんの身体、引き締まっていたっけ。
こんなに軽々と抱き抱えられるなんて……男の人って凄いな。
螺旋階段を革靴がカンカンと音を響かせて、降りていく。
その姿はきっと本当に絵本から飛びててきたような王子様に違いない。
そんな人に抱き抱えられる私は、どうか今だけ……お姫様に見えますように。
松葉杖がエレベーター前に落ちていたので、それを拾おうとして紡さんに奪われた。
脇に松葉杖を挟み、それでも表情を変えない紡さんは、漸くいつもの紡さんらしくなった。
会社に残ってた人は少なかったけれど、警備員さんたちにはしっかりと抱き抱えられてるのを見られてしまった。
車に乗り込んで、シートベルトまで閉めてもらい、送ってもらう。



