「車で送りますから抱き抱えさせて頂きます」
「ここで待ってま」
「もう喋らないで下さいね」
「……はい」
ぴしゃりと言われると抵抗なんてできなかった。
こうしてなんちゃってシンデレラは、偽王子の元を逃げ出そうとしたのに捕まり、あまつさえ送ってもらう事になりました。
「あー、やっぱり社長からか」
副社長室に戻り、内線を確認するとそう溜め息を吐かれた。
「ちょっとだけ連絡させて下さいね」
「もちろんです」
紡さんは私を椅子に下ろすとすぐにかけ直した。
「もしもし、俺はもう帰りますよ」
まだ仕事が終わってなかったのか、そもそもさっき、社長の電話待ちだったのかもしれない。
「だって、今、新に緩奈さんを奪われそうなんです。失礼しますよ」
「!?」
私の目を見ながら―――挑発的に紡さんは言ったけど。
それは本当に社長に向けての言葉だったの?
優しいちょっと垂れ目な瞳が真っ直ぐに私を捉えている
「俺の企画しているチームはこんな事件ぐらいじゃ揺らぎませんよ。舐めないで下さい」
そう言うと、まだ少し乱れている髪をかきあげて舌打ちをした。
――いつもの紡さんらしくない余裕がない感じ。



