「――はぁっ び、びっくりさせないで下さい……」
「ううっ は、離して下さい」
じたばた見苦しく暴れると、紡さんは更に強く抱き締めて来ました。
「離せるワケないでしょ」
落ち着いてきた紡さんは、怒ったような心配した声で言った。
「泣いてる貴方をを、離せるワケ、……ないでしょう」
ギュウッと抱き締める腕が強くなり、私は嗚咽を隠すのを止めた。
そう、 私、紡さんの顔を一目見たら、安心して……涙が溢れてしまったんだ。
自分でも気づかないうちに……。
内線の電話がまだ鳴り響いていて。
それでも構わないで私を後ろから抱き締める紡さんに、ふと恥ずかしくなり我に返ってしまう。
「か、帰りますっ」
「往生際が悪いですね」
紡さんは呆れた様子で笑うと、ボソッと耳元で言った。
「内線で帰るシンデレラなんていませんよ」
内線を聞いて、螺旋階段を慌てて降りるシンデレラなんて、いません。
そう思っても涙が零れて声は出ない。
階段途中で、しばし無言のまま。
座って後ろから抱き締められる異様な状況ですが、
紡さんは離してくれそうにありません。



