すぐに立ち上がり後ろに下がると、ネクタイもしてない、髪もちょっと乱れた彼がドアの隙間から見える。
此方に向かって来ている。
まだ携帯が鳴りやまなかったけど、何回目かでやっと留守電へ切り替わる。
もしや、携帯を鳴らしたのは……。
じりじり下がりながら携帯を見つけ、確認すると知らない番号が表示されていた。
「緩奈さん、こんな時間にどうしたんです?」
心配してくれている紡さんが近づいてくるのが、怖くて、でも何で怖いのか分からなくて、
私は踵を返し、慌てて逃げ出してしまった。
「緩奈さん!」
お、追いかけないで下さい!
「待って! 階段は走らないで下さい!!」
階段を駆け下りる私に、どんどん紡さんの声は近づいて来ます。
それでも螺旋階段を、全力で駆け下りて、足の痛さなんてもうどうでも良くて。
その時、内線の電話が鳴った。
「緩奈さんっ」
「きゃああああ!!」
腕を掴まれた私は、紡さんに後ろから抱き締められるように、――階段に座り込んでしまいました。



