駄目だ。
今日は一杯ありすぎて、脳がきっと興奮しているんだ。
だから、二人がした慣れ切った口づけに動悸が止まらない。
新さんが林田さんの件を皆に隠すことなく説明して、雑誌との連動企画が白紙になったことを伝えた。
映画方面への連絡や社長との話し合い、出られなかった会議、始末書などは全部紡さんがチームの責任者なので引き受けてしまい、副社長室に閉じこもったままだった。
定時になってポツポツと帰宅して行く中、新さんと私だけが残った。
松葉杖を借りれば、足が痛むことなく歩けるのだけれど、勝手に帰らないように待っていた。
でもこんな足ではきっと、キッチンには立たせて貰えないから今日も土がついた野菜たちの出番はないと思う。
「新さん、私もうタクシーでも使って帰ります」
おずおずとそう言って松葉杖で立ち上がると、渋い顔をしたけれど言葉ははっきりしていなかった。
「すまん、今日は仕事で映画を見に行くことになってしまった」
「大丈夫ですよ。心配ありがとうございます」
「あの親父、社長という権力を振りかざして本当に腹立たしいが、すまない」
「いいえ。ありがとうございます。お疲れさまでした」



