「ふうん」
私が小さい頃にスケッチブックに描いただけのそのイラストから、デザインを起こしたハンカチとリップ。
副社長にそのハンカチを示したということは、あの弟が私のリップを拾った可能性が高い。
でもなんでそれで私を追いかけるのか、思わず怖くなって逃げちゃったけど。
「じゃあやっぱり二人に聞くしかないんじゃないかな」
事務室で、今度は歓迎会の時に胸に付ける会社のマークのデザインバッジをビニール袋から取り出し渡しやすいようにする作業しながら塚本さんがため息交じりにそう言った。
「てっきりどっちかと付き合っていたのに、どっちかに合コンでお持ち帰りされて二股がバレた修羅場かと思ったのに、がっかりだわ」
「私は、塚本さんの想像力にびっくりです」
そんな様子に見えるはずが無い。
会社のマークのバッジは、澄みきった空のような青い空に羽ばたく鳥。鳥の瞳に赤のルビーが輝いている。
本物のルビーだというから、私と塚本さんは手袋をしての作業だ。
「私が祖母の孫だと分かったから慌ててたのだとしたら、何が目的なのか益々怖くなりました」
「そう? 案外貴方が入って来たことを知らなくて取り乱してたんじゃない? 社長に呼ばれてるし、――歓迎会に二人が呼ばれてる辺り何かありそうね。――あ」
「あ?」
塚本さんが何か思い出したように言う。



