紡さんの言葉尻が強くて、思わず見上げたら――泣きだしそうな怖い顔をしていた。
「どうするつもりだったんですか」
もう一度言った言葉は、弱々しく震えていた。
「ごめんなさい」
「勝手に歩き回らないように躾が必要ですね」
そう言って、私の数段したの階段で傅くと、恭しく私の足首を持ちあげて――唇を這わせた。
綺麗な――映画の1シーンのような、洗礼された儀式の様な、甘い口づけを。
「兄貴、駄目だ。話にならねーよ。親父への説明は兄貴が行ってくれ」
ゆっくりと持ち上げていた足を階段へ下ろすと、代わりに立ちあがる。
「分かったよ。昨日、新は社長と喧嘩してましたし」
「ちょっとな。不破は俺が医療室へ運ぶから」
「え、ちょっと、運ぶって」
ひらひらと手を振りながら去っていく紡さんは一度も此方を振りかえることはなかった。
「悪いな。医療室のおばさんが折り畳んだ車椅子を開けないとか言うから、直接連れて行く」
「わ、私ならお婆ちゃんが車椅子使ってるから分かりますっ」
「でももう抱えて行った方が早いから」
そう言われて、強引に新さんに抱き抱えられた。



