『こっちには林田さん来てないよ』
チームの人へ内線をしたら思った通りだった。
急いで副社長室へ駆け上がると、その音に気付いたのか――林田さんが飛び出してきた。
「何をしてるんですか!」
「ただの忘れ物を取りに来たのよ。さっきちょっとね」
「嘘です。ここ、お昼は鍵が掛ってました。どうやって開けたんですか!」
のらりくらりとはぐらかす林田さんの手には、スマホが握られていた。
「此処には大事な資料があります、持ち出してないか確認させて下さい!」
「いやよ。人の携帯見ないでよ。触らないで」
林田さんの携帯を握り締めながら、私は気づけば後ろへ下がっていたのだろう。
足を踏み外して階段を転がった。
嗚呼、シンデレラが舞い降りて来そうなオシャレで可愛い階段を――私は今、情けないぐらい豪快に転がって――。
「緩奈さんっ」
「不破っ」
転がって数秒で、私は肩を支えられた。
ぐっと引き戻してくれるとそのままバランスを崩していた体制を整えられた。



