「じゃあ、データが完成したらチェックお願いするわね。お忙しい中、今日はありがとうございました」
それからあっさりと帰っていったのがお昼過ぎで、それからはまたいつもの仕事に取りかかあった。
紡さんは違う部署の会議に呼ばれ、新さんは映画の監督と小道具さんとこちらも会議。私も事務の仕事の方へ回るように指示が出た。
事務の前に行くと、何故か釜井さんが居て思わず身構えてしまった。
「何か仕事ですか」
私がそう尋ねると、釜井さんは綺麗に巻いた髪を指先で遊びながら私を見て笑う。
「別に」
身構えたのに厭味が飛んで来ないどころか私には興味もなさそうだった。
「私、今日も定時なの。映画に誘われちゃって」
「……良かったですね」
新さん狙いじゃなかったのかと呆れつつもそのままスル―しようとして、また声をかけられた。
「そう言えば、忘れ物を取りに行くって林田編集長がさっき受付を突破したけど、見つかったのかしら」
「はあ!?」
「私は紡副社長の言った通り、林田麻里亜は無条件で通したわよ」
その無茶苦茶な発言に私は踵を返した。



