よく見れば、本棚にはトロフィーやガラスに文字を彫刻された賞状、壁にはいろんな資格の認証が学淵に入って飾ってある。
これは丁寧に新さんが飾ってくれたらしい。
「苦手なもの、か。うーーん? 面白くないこと?」
「抽象的すぎます」
「退屈な時間、あ、満員電車が嫌で車通勤なところかな」
「……聞いた私が馬鹿でした」
微妙にずれた回答に、私が聞きたかった話が何だったのか分からなくなる。
「好きなものをもっと聞いてよ」
「はいはい、好きなものは何でしょうか」
ピアノの鍵盤を恐る恐る人差し指で押すと、軽いタッチで音が鳴る。
実家のピアノとは重さが違うから自分で調律してたりして。
「優雅な仕事の時間を切り裂いてくれる、君の元気な足音かな」
ポーンと指先で弾いた旋律が思ったよりも身体中に跳ねる。
「高いヒールを履いていた君が足を痛そうにしてた初日が懐かしくなるよ。今はあの螺旋階段を元気な足音がくるくると登って来るのが楽しみで、爪先にキスしたくなる」



