ハンカチを見て、何で副社長が私を探してたとか言い出すの?
踊り場の手すり越しに、二人がモデルの様な出で立ちで私を見下ろしている。
「君のこのハンカチは何処で手に入れたのですか?」
出に入れた……。
それには語弊がある。
これは最初から私の所有物だ。お婆ちゃんの為に私が描いた、私の作品だ。
「ごめんなさい、お答えできません!」
「ああ、待って」
「おい、逃げるな」
二人が追いかける中、私は階段を下りて行く。
どうか。お願い追いかけないで。
「副社長、社長がお待ちですよ」
私と二人の間に割って入ってくれたのは、塚本さんだった。
「新さんも、至急社長室にとの事です」
にっこりと笑うと、有無も言わさずに私の方へ振り返って肩を掴んで来た。
「詳しい話はあとよ。それより、貴方の招待状入って無かったわ。やっぱり契約には招待はないみたいね」
今はそんな事、どうでもいいです。二人に追いかけられている私に、なんてことを言い出すんですか。
「だ、大丈夫です。身の程を弁えておりますので」



