「場合によっては遠慮したいかな、って思うのですが」
「俺の部屋でじっくり教えてあげますよ。おいで」
エスコートしてくれよう差し出した右手は、紳士的で優しいのですが、その手を取ってはいけないような黒いオーラを感じる。
じりじりと椅子を下げて立ち上がると、お弁当をゴミに纏めてカバンに押し込む。
「あっは。うちのゴミ箱に捨てて良いよ」
「あ、新さんが遅いしやっぱもう帰ります。今ならまだ終電間に合いそうですし」
「帰すわけないでしょ?」
お酒を一気に飲み干すと、勢いよく立ち上がった。
じりじりと近づいてくると、私の身体は金縛りにあったかのように動けなくなる。
手慣れた様子で、私を手玉にとるように笑うその姿は、悪魔降臨かと思う。
逃げられない私の耳元で、紡さんは笑う。
「いいから、部屋にいくよ?」
それって最初から選択権、ないってことじゃないですか?



