「私もお弁当頂きます」
「え、あの段ボールの野菜たちは?」
「……この家、調味料なさそうだから何も作れませんよ」
電子レンジを借りるためにキッチンへ入ったけれど、水回りが新築のように新しく綺麗だった。しかも、コップ以外のお皿は使った痕跡が見られない。
その上、紡さんが冷蔵庫を開けたけれど、おつまみ的なチーズとかビールとかしか入っていなかった。
「二人は料理とかは」
「したことないかな。外食中心」
これだから金持ちは、と黒い感情が生まれたけれど、それが当たり前だった二人に自分の価値観を押し付けるつもりはない。
私がお弁当を食べる中、目の前では丸い氷を入れた焼酎を、紡さんはちびちび飲みだしてしまった。
「今度何か作って貰おうかな」
「遠慮します。私、本気ですからね、明日には社長に直談判しちゃいますからね、こんな政略結婚みたいなこと」
「何が不満なの? こんな誰もが羨ましがる物件を」
そう笑う良物件さんは、自信が有りすぎて良い所とかアピールもしてないくせに。



