「いえ。つまらない嘘をついてごめんなさい。失礼します」
頭を深々と下げて立ち去ろうとしたら、腕を掴まれた。
「お前、今一人になると泣くだろ?」
だから離さないと言わんばかりに強く腕を捕まれて逃げれない。
痛いのに、その痛みが優しさで溢れていて。
切なくなる。
嬉しいけれど、切なかった。
「やっぱり、新の事を好きになったんじゃないですか?」
まだ人の心を掻き回そうとする紡さんに軽く殺意が沸く。
平手打ちでもして、クビになった方がきっと清々しい。
右手に力を込めたら、新さんが繋いでない方の手で遮った。
「送るから、車に乗って」
ロータリーに停められた新さんの車に視線を泳がすと、頭をポンポンされる。
「一人で帰れよ、兄貴は」
冷たく言い放ち、助手席のドアを開けてくれた。
私は紡さんを一度も振り返らないまま、車に乗り込む。
紡さんの気持ちが全く分からなかった。



