社長の座。
私と結婚する方が会社を継ぐという馬鹿げたルールを紡さんは実行しようとしていた?
今日、麻里亜さんを牽制したり新さんに嘘をバラさせたのは、自分がどれほど会社を継ぎたいのか新さんの前でパフォーマンスするため?
言葉を失う私に、新さんが溜め息を吐く。
「兄貴はこんな奴だ。頭の中では算盤弾く事ばかり」
「はは。算盤じゃなくて俺は電卓かな」
「返します!」
指輪を抜き取ると、紡さんの胸らへんに押し付けた。
けれど、受け取ろうとしない紡さんに苛立ち、指輪は地面に落ちた。
新さんの靴先で転がるのを止めて、音もなく弧をかきながら止まる。
「わ、私のせいでこんな無意味な喧嘩が起きるなら、私辞めます。会社辞めますから」
情けなくて惨めで涙が滲んできた。
紡さんに踊らされて新さんを振り回して。
本当に最低だ。
私の――私の才能を誉めてくれたのも、私が簡単に騙されると思ったからですか。
言いたい事は山ほどあったけど、全部押し込める。
「不破。お前のせいじゃねーぞ」



