「あれ? もしかして新を好きになりましたか?」
――好き?
予想にもしていなかった言葉に思わず言葉を失ったけれど、頭をブンブン振って否定する。
「違います! そうじゃなくて」
「ああ、嘘をつく事に後ろめたさを感じ始めたんですね。新が良いやつだから今更になって」
刺がある言い方に胸が突き刺さるけれど、図星だから仕方がない。
「その通りです。こんな指輪で新さんを騙すのは良くないですって」
「指輪を受け取ったのに?」
「それは新さんがスランプだからって」
紡さんを睨み付けると、紡さんの視線は私じゃなくその後ろを見ていた。
後ろの並んでいるタクシー乗り場?
違うのかな。その目線と後ろから響いてくる革靴の音に思わず固まる。
後ろを振り返るのが怖かった。
「おかしいと思ったんだよな。わざわざこんな駅まで迎えに来いとか連絡してきて。――へぇ、こんな事か」
「あ、らたさん」
私の前まで歩いてくると、私を一瞥した後に紡さんに向き直る。
怖い顔をしている。いつものしかめっ面ではなくて、腰が抜けそうな威圧感のある緊迫した表情。
「俺のスランプを理由に不破に嘘つかせて、兄貴が欲しいのは社長の座だろ」



