振り返ってその声の人物を見上げると、甘く滲むように笑っている。
「紡さん」
「って嘘ですよ。待っていたと言ったら信じますか?」
その言葉に思わず頭を振ると愉快そうに笑う。
「嘘ですよ」
それがどちらを示すのか、分かりにくい紡さんの言葉に思わず首を傾げてしまった。
「連日のように林田編集長から謝罪の手紙が届いたり電話が来るので会食してきました。美味しくない酒は悪酔いしかしませんね」
会食にしては早く切り上げて来たのかな?
向こうがタクシーチケットぐらい用意しそうだな、とか頭を過ったけれど今はそんな事どうでも良かった。
「はぁ……。あの今日も速達で林田編集長からきてましたよ」
「じゃあ今日で終わりですよ。もう大丈夫ですね」
嬉しそうな無邪気な笑顔に思わず拍子抜けしてしまった。



