「なんで嘘を吐くんですか! どっちが本当なんですか!?」

「まあまあシンデレラも、舞踏会では王子の招待を最後まで気づかなかったけど恋に落ちたでしょ?」
「どっちが偽王子かはたまた両方偽王子でもシンデレラは恋に落ちたのか気になるな」

「はぐらかさないでくださいよ!」

キーキーと私が怒鳴る中、二人は意気投合してテキパキと珈琲を片づけると、さっさと中へ入ってしまう。
言わないのはなんで?


「言えない理由は何ですか」
二人のスーツの裾を引っ張ると、二人は表情を変えずに笑う。

「助けて貰った方に心が揺れたらフェアじゃないから」


何故かそこだけは、同じプライドを持っているのか譲らないらしい。

結局私が分かったことと言えば、やはり二人が助けてくれたことだけ。

あとは、知ってはいけない範囲になるらしい。

私が知って良いことが少ないのは、二人に先入観を持たないため。


――婚約の偽装をした今ならその先入観はもうどうにでもなると思うのだけれど。

男二人がそう通すなら、見守るしかないのかもしれない。
秘密を知るのはいつになるのか神様さえきっと匙を投げるだろう。
癖者のこの二人の前では。