「これって、偽装の指輪ですか?」
「貴方がそう思うならそれでいいですよ。今はね。さて左手を出して下さい」
良いのか一瞬迷ってしまったけど、そのリングの中央の輝く宝石に吸い寄せられるように手を伸ばしてしまっていた。
薬指に嵌められて――紡さんの手が微かに擦れただけで眩暈の様な動悸がしてしまった。
「うん。サイズもピッタリですね」
「可愛い」
内側に緑色の宝石が埋め込まれた、指輪。
「あ、りがとうございます?」
でもこれって偽装が終わったら返さなきゃなんだよね。
そう聞こうと思ったら、部屋の中から足音が聞こえてきた。
「おい、居るならさっさとこれに目を通せよ」
副社長室から飛び出してきた新さんが、床に置いていた紡さんの珈琲を思いっきり蹴り上げてしまう。
蓋をしっかりしてはいたのだけど、宙を舞う中、ストロー部分から珈琲が飛び出してくる。
それを避けながらキャッチした新さんと、私を庇って突き飛ばすように逃がす紡さん。
あれ?
私、この光景を知っている?
既視感にぼうっとする私をよそに新さんが紡さんを怒鳴りつけて我に帰る。
「なんでこんなところに珈琲をおいてるんだよ!」



