「お前って、一歩引いているせいか結構グサグサ言うよな」
「そうですか?」
「まあ、俺にぐらい言い返せるなら、度胸はつくだろ」
「キモに銘じておきます」
確かに新さんは仕事中は怖いけど今みたいな時は、ちょっとぶっきらぼうな感じの人だものね。
どっちかと言えば、私は受付嬢や林田さんみたいな人が怖いです。
会社に戻ったら一階の玄関でカードを提示して入っていく。
慣れてくれば顔パスなので結構緩い警備員さんたちだけど、念のために私はいつも出して行く。
受付は今日も釜井さんが居て、――またまた私だけ睨まれた気がしたけどきっと気のせいだと思いたい。思う。そうする。
帰ってすぐに二段抜かしで螺旋階段を登っていく新さんの背中を見つめながら思わず笑ってしまった。
「あの様子じゃ、スランプは脱出できたようですね」
「うわ。いきなり現れないで下さいよ!」
後ろから現れたのは、珈琲を持った紡さんだった。
腕にぶら下げている小さな紙袋は、『TEIARA』と書かれている。
自社の宝石でも買ってきたのか見本なのか。
「今回は早かったですね。前回は三カ月もスケジュールが押したのに」
「三か月もですか!」
「こだわりもプライドも高いからね。でも、貴方のお陰です。ありがとう、緩奈さん」



