「人違いです!」
「間違うか! こら、待て」
「不破さん、ちょっと、何処行くの?」
二人に呼びとめられても、私が止まるわけもなく。
きゃー。どうしよう、よりによって昨日の強引野郎がここの会社のデザイナーだったなんて。
しかも、社長の息子って言ってなかった!?
ありえない!
あああ。あんな地味な顔でも合コンへ行くのかよって噂されて笑われてしまうんだ。
「おい、待てってば。何処行った!」
エレベータの両脇に置かれた観葉植物の物陰から外を伺うと、渡り廊下の真ん中でさっきの人がまだ私を探していた。
エレベーターが来たら、飛び乗ってトイレかどこかへ逃げ込んでやる。
そもそもなんであの人、私を追っているの?
急に走ったために、足の先がズキズキと痛んだ。
そっと観葉植物の影に隠れて靴を脱ぐと、親指の皮が擦れて血が滲んでいる。
実際に血を見てしまうと、今まで以上に痛い気がして涙が込み上げてきた。
「あらら、ソレ、どうしたんですか?」



