新さんは電車に乗ると、持って来ていたスケッチブックに何かを夢中で描き出した。
私なんて見えていないようなご様子で、一心不乱に書いているようにも見える。
これは、紡さんの狙った通りに新さんのプレッシャーが剥がれ落ちたのかもしれない。
窓の外を見ながら私の少しだけ肩の荷が下りる。
もしかしたら、私と紡さんが偽装婚約する必要はなかったのかもしれないと、躊躇してしまう。
でもそれは、きっとこの企画が終わる時の結果までは分からないんだと思う。
うちは若い女の子向けのジュエリーだけど、ターゲットにする年齢が違う部署は『queen』だの『clown』だの一杯ブランドがある。
その中で売り上げや認知度が高いのはやっぱり『TEIARA』だと思うから、そのプレッシャーは私にはきっと分からないんだと思う。
「よし。出来た。お前、すげーぞ。お前のおかげだ」
「何もしてないですが、しかめっ面じゃなくなったから良かったです」



