「貴方の彼、凄いわね」
焦っている私にピアノに寄りかかって紡さんを見つめる美女がうっとりそう笑う。
「プロポーズ、早く返事をしてあげなさいね」
「プ? ちがっ」
そんな事あるわけないのに。
これは駆け引きで、私に嘘を吐かせるからには責任を取るからってことのパフォーマンスで――。
言い訳を色々と並べて見ても結局は紡さんの奏でる曲に虜になってしまうんだ。
悔しいけれどこんなに吸いこまれそうな魅力的な曲を弾ける紡さんを――信用しないなんてことはもうできなかった。
どれだけ先のことを考えているのか分からない。
どれだけの責任を覚悟で私と偽の婚約を演じると思いついたのかも分からない。
けれど、魅せられた目隠しの世界でも紡さんの余裕は変わらなくて。
本当に悔しい。こんなに、――こんなに聴き入ってしまうなんて。



