わざわざ仕事中の新入社員に塚本さんは手渡ししていく。
私は主に女性社員で、塚本さんが男性社員に回って行く。
私も必死で謝りながら申し訳なく案内書を渡して行く。
あああ、慣れないヒールに足が痛むよう。
「うーん、今の部署は新人少なかったわね。可もなく不可もなくって感じ」
「塚本さん……」
「でも、次の部署は、イケメン御曹司がいるからね。社長の息子さん、めちゃくちゃイケメンなんだから」
「そ、そうですか」
塚本さんは綺麗だからそんなは話で盛り上がっても違和感ないけれど、私はそこまで騒げなくて苦笑いしかできない。
自分には遠い世界の人だよね。御曹司でイケメンなんて。
塚本さんの足元をみれば私とそう変わらないヒールの高さの靴を履いていた。
要は慣れなんだろうな。塚本さんはあの靴で走れるし。
「あ、居たいた。新(あらた)君よ、新くーん」
塚本さんの声が一オクターブ高くなったと思うと、走り出した。
私もズキズキする足を引きずりながら走る。
「新入社員へ歓迎会のお手紙です」
「ああ、お疲れ様です。でも、今年は新卒のデザイナー入ってねーはずだけど」
乱暴な言葉使いで自分の部署を覗きこむこの人。
この声、私、どっかで聞いたことあるような。



