「んー、俺進学するつもりないんだ。
本当は就職クラス行きたかったけど、せめて進学クラスに行けって先生たちがうるさかったから」
「進学しないの?長谷川くん」
頬杖をついていた彼は、その切れ長な目で私を見た。
「早く就職して、自立したいんだ。
早く大人って認められたいから」
その目を伏せ、つぶやくように言った。
「あの人いつまで待ってくれるかわかんないし、俺年下だから……
早くしないと取られちゃうかもしれないだろ、大人の男に」
と照れたように笑った。
私はその時、うまく応えられたのだろうか。
――覚えていない。

