彼は、いつもどこか遠くを見ていた。
そんな彼を私はただ見つめていた。
話しかける勇気もなく、ただ恋焦がれるだけ。
ウワサ話として届く、真実の曖昧な話が唯一彼を知る方法だった。
最終学年にして、彼と同じクラスになった。
頭も良くて先生たちからも期待されていた彼は、難関国立を目指すクラスに行くと思っていた。
同じクラスになれたのは驚きだったけれど、それよりももっと嬉しかった。
席も近くて、話すようになった。
見ているだけじゃわからない彼が、ウワサ話じゃ見えない真実があった。
はしゃいだり、ふざけたりはしなくとも、よく笑い、冗談も言う。
いつも眠そうで居眠りだってする。
時々寝癖もつけてくる。
知れば知るほど、好きなる。

