でも、彼女が、西岡さんが泣いている。 どうしていいか分からない。 今すぐ抱きしめてしまいたい。 今すぐ泣かせた相手を殴りたい。 君が大切だと、守りたいと言ってしまいたい。 自分本位のことしか頭に浮かばない。 けれど、俺は臆病だから。 すべてを飲み込んで、愛おしい彼女に言う。 「俺でいいなら、聞かせて」 臆病だから、逃げた。 逃げたから、知らないでいられたことを知ってしまうんだ。 知ってしまったら、彼女のために出来ることをしなくては。 例えそれが、俺の本意じゃなくても。