「西岡さん?」 「!」 顔を上げられない。 長谷川くんではない、誰かわからない男子生徒の声。 涙でぐしゃぐしゃの顔を見せられない。 それでもこぼれ落ちる涙は、ぽたん、と足元に落ちた。 「……っ、西岡さん!」 肩を掴まれ無理やり向いた先には、ひどく動揺した顔があった。 1年2年と同じクラスだった――倉部孝太郎(くらべ こうたろう)くんだった。 「……どうして、泣いてんの……」 眉間にしわを寄せて、私の目をまっすぐ見てくる。 未だに私の目からは、涙が次々とこぼれ、終わりを知らない。