「これ、どういう状況?」
若いお兄さんが、駆け寄ってきてくれた。
「いきなり倒れて、さっきまで苦しんでたんですけど…」
「急に意識がなくなったってことね」
男の人がそう言っておじいさんの首やら手首を触っている。
そして、
「君、あそこのお店からAED持ってきて」
そう言いながらその人はおじいさんの着ている服を脱がし始めた。
「はい!」
あたしは言われた通り近くのお店からAEDを借りる。
前に学校でAEDを使った授業をした。
まさか自分が使うとは思わなかった。
おじいさんのところまで走る。自分がもっと早く走れればよかったなんて
今思ってもしょうがない。
お兄さんにAEDを渡すと手際よく開けて中身をおじいさんの胸と脇腹に付ける。
あたしは見ていることしかできなかった。
「離れてっ!」
お兄さんがそう言った後、おじいさんの体が揺れた。
その時、
「う、うぅ」
おじいさんがうめき声を上げた。
お兄さんはおじいさんの首に手を置くとあたしを見た。
「意識、戻ったよ」
そう言って微笑んでくれた。
「よ、よかったぁ~」
安堵からか、あたしはそのまま腰が抜けたように座り込んだ。

