「はーやと!何見てんの?」
先輩が乗ったバスをしばらく見てると、同じクラスの栗原花梨が俺の隣にやってきた。
甘ったるい香水の匂いがキツくて、思わず顔をそむける。
「あ~2年生出発なんだぁ~」
1台ずつ動きだしているバスを見てそう言う。
「ていうかぁ、最近隼人急にどっか行ったりするよねぇ~どこ行ってんの?」
栗原が俺の顔を見て首を傾げる。
それがワザとっぽくて俺は好きじゃない。
「別にどこでもいいだろ」
そう言って俺は教室に入ろうとする。
その時、
「七海真子…」
栗原が不意に先輩の名前を口にした。
俺は振り返った。
「やだ~怖い顔して~ただ文江が最近その先輩と隼人がよく一緒にいるのを見るって言っててさ~」
文江とは栗原の取り巻きの一人。
いつも栗原にくっついている奴だ。
「…別に。ただの先輩だって」
栗原は良い噂を聞かない。
自分の為ならだれがどうなってもいいって感じのやつだ。
真子先輩を巻き込むわけにはいかない。
「ふ~ん、そうなんだ」
少し怪しむように栗原がそう言う。
真子先輩と会うときは、少し気を付けないとな。
そう思ったけど、時間が経つにつれてそんなこと忘れていった。

