「ありがとな」



あたしに抱っこされながら泣き疲れて寝てしまった大ちゃんを、啓太に渡す。

大ちゃんも大きくなったから、抱っこはなかなか大変だ。

でも啓太は軽々と大ちゃんを持ち上げる。



「ううん、帰りに代わりのりんご飴、買ってってあげて」



そう言ってあたしは啓太にお金を渡した。



「サンキュ。それよりも…」



そう言って啓太はちらっとあたしの隣を見た。

あっ!!すっかり忘れてた!!



「あ、えっと、こちら隼人くん」



あたしがそう言うと隼人くんは笑う。



「1年の松永隼人です。戸川先輩ですよね?」



「…あぁ」



少しムスっとして隼人くんを見てる啓太。

なんでそんな怒ってんの?



「啓太とは幼馴染なの。あ、今日浴衣着せてくれたのは啓太のお母さん!」



「あ、そうなんだ!先輩のお母さんすごいですね!」



隼人くんがそう言っているのに啓太は『あぁ』とか『うん』とかしか言わない。



「ちょっと、なんだか今日どうしたの?機嫌悪くない?」



あたしがそう言うと啓太はギロッとあたしを見て、



「い、いたたたた~!!!」



何を思ったのか、いきなりあたしの頬をびよよ~んと伸ばしたのだ。

そして、パッと手を離すと、



「コイツもいるし、帰るわ。あんま遅くなんなよ」



そう言ってさっさと帰ってしまった。

一体何があったんだろう…。