「そんなことないよ」
あたしの左手が暖かいものに包まれた。
それが隼人くんの手だと認識するまでに時間はかからなかった。
「真子先輩は、俺にとってのヒーローだから」
そう言ってあたしのギュッと握っていた手をそっと解いて、代わりに自分の手をあたしに絡ませた。
今、隼人くん『俺』って言った?いつも『僕』だったのに…。
それよりも…。
「ヒーロー?」
あたしがそう聞くと、隼人くんはフワッと笑った。
「とにかく、僕は真子先輩が好きなの。それでいいの!」
そう言いながら繋いだままのあたしの手を引く。
あたしの顔は赤い。でも前を歩いている隼人くんの耳も赤い。
それを見たらなんだか可笑しくて笑えた。

