「じゃあ2人とも、火と戸締りはしっかりするんだぞ」



兄貴が玄関で大きい荷物を持ってそう言う。

今日から1週間、病院の研修生として、泊まり込みの実習だ。



「賢一さんも、実習頑張って!」



隣で真子先輩がそう言う。

すると兄貴が俺の耳元に口を近づけてボソッと言った。



「…俺がいないからって、真子ちゃんに手出すなよ」



そう言ってニヤっと笑う。



「ば、バカ兄貴!早く行けよ!!」



俺は兄貴の背中をぐいぐいと押す。

多分顔が赤い。

だって、それを言われて意識してしまった。

兄貴がいない1週間、俺は真子先輩と2人っきりだ。



「ははっ!じゃあ行ってくるな!」



「行ってらっしゃい」



そう言って兄貴は出て行った。



「さ~て、隼人くんももうすぐ行く時間だね」



真子先輩がリビングに戻りながらそう言う。

先輩たち3年生は今家庭学習期間で、学校には行かない。

つまりは休みだ。



「先輩ずるいなぁ~休み」



俺がそう言うと先輩はケラケラ笑う。



「じゃあ今日は隼人くんの好きなオムライス作って待ってるから」



そんな先輩を見て俺は一気にやる気になった。

俺ってなんて単純なんだろう。



「わかった!俺頑張ってくる!!」



こうして兄貴がいない一週間が始まった。