「…風邪ひくぞ」
そう言ってもう一つの椅子に座ったのは啓太だった。
「ありがと」
あたしは啓太が肩にかけてくれた上着を着た。
「なに一人でたそがれてんだよ」
啓太が窓の外を見ながら言う。
「うん、なんだか寝れなくて」
あたしも視線をもう一度窓の外に移した。
「俺らも、もう卒業だな」
あたしがさっき考えてたことを啓太も言う。
「早いねぇ」
2人の間に少し沈黙が走る。
そして、啓太が口を開いた。
「松永は…いつまで真子の家にいるんだ?」
啓太がそう聞いてきた。
「新しいマンションが出来るまでだから4月まで…」
あたしはそこまで言うと急に目頭が熱くなった。
無意識に涙が出てくる。
それに気づいた啓太が、椅子から立ち上がって近づいてきた。
あたしは急いで涙を拭った。
「あ、あれ?なんでだろ?なんで涙が…」
そう言うと啓太があたしの手首を掴んだ。
涙はまだこぼれてくる。
啓太は優しく、あたしを抱きしめた。
公園で抱きしめた時のように。

